2022年8月19日

立山、剱パノラマスキー
~室堂から反時計回りに馬場島までの周遊~

高尾 文雄

2021年から2022年のスキーシーズンはなかなか充実した山スキーができました。シーズンの最後に楽しい山スキーができましたので以下に報告します。

この周遊ルートは若いころは良く行っていましたが、今回久しぶりに行くことができました。主催者は私で、メンバーには20代、30代の二人を誘いました。年齢差は体力差でもあり、行動中はかなり差をつけられましたが、なんとか最後まで大きな迷惑をかけずに計画を貫徹することができました。

<日程>
5月2日(月)~4日(水)

<メンバー>
L:高尾文雄、穂積裕太、青木俊輔

<記録>
5月2日(月)晴のち吹雪
室堂10:30~一の越12:00~雄山14:00~御前谷~左岸尾根2200mテント地16:40

前夜遅く車で関西と関東から馬場島に入り仮眠した後、2日の早朝に車一台を馬場島にデポして、一台の車で立山駅へ向かった。駅は登山者とスキーヤーでごった返していたため出発に手間取り、途中のバスの車窓からは晴天の立山連峰が望めたが、室堂についたころには悪天の兆しが出始めていた。

室堂から一の越まではシールで登り、一の越からはスキーを担いでアイゼンで雄山へ登った。出発時は見えていた立山も一の越到着するころから天気はどんどん悪くなり、吹雪となり視界も悪くなり見えなくなった。

写真1 室堂から一の越を目指し出発

先程までたくさんいた登山者はみんな下りて、山頂は我々3人だけになっていた。山頂脇の社務所でアイゼンからスキーに履き替えて、御前谷にドロップインした。斜面は広く急斜面で滑降には最適なのであるが、悪天で視界が限定され周りがよく見えないため慎重に下る。残念ながら期待していた快適な大滑降にはならず、時間をかけてゆっくり下るしかなかった。

荷物が重いうえに途中からデブリが出てきて本当に滑りづらい。なんとか左岸に登り返す尾根が見え、シールを貼って斜登行でコルに出た。平坦な快適そうなテントサイトが見つかったので、ここに泊まることにした。

写真2 立山中央山稜のテントサイト

5月3日(火)晴
出発7:20~8:00内蔵助平~9:30ハシゴ段乗越~10:30二股~13:00平の池

今日は一転して朝から晴れ。昨日積もった新雪は10-15センチくらいか?テントを撤収して、テントサイトの尾根から内蔵助谷へ向かい滑り降りた。内蔵助谷はすこぶる快適な滑りを楽しみ、あっという間に内蔵助平に到着。

写真3 内蔵助谷を滑って内蔵助平

写真4 内蔵助谷を滑る

内蔵助平は誰もおらず、人の歩いた痕跡もない。広い雪原を横切り、大きな谷をハシゴ段乗越まで標高差300メートルを登る。

登りは途中から傾斜が急に増し、ジグザグを切ってピンポイントで小さなコルになっているハシゴ段乗越に到着。

写真5 ハシゴ段乗越からの内蔵助平

乗越でシールをはがして、剱沢まで標高差350メートルを滑り降りた。狭くて急斜面であるが雪がよくて快適に滑ることができた。

写真6 ハシゴ段乗越から剱沢への滑り

剱沢はさすがに登山者が数名いた。二股辺りにテントを張って仙人山へアタックするらしい。剱沢に合流してすぐに雪渓が割れはじめる。

二股までは割れた雪渓をどうにか繋いでスキーで行けた。シールを貼って三ノ窓雪渓を上る。チンネ、八ッ峰が眼前に見え素晴らしい!

写真7 三の窓雪渓

しばらく上ったところで、右から入ってくる北股へ進路を変え、平の池まで標高差400メートルの登り。天気も良く、景色も良く途中の沢で水を汲んだりして平の池に到着。ここは本当に最高の天場です。

写真8 平の池

テントを張り、池の平山へアタックする。若手二人は頂上まで標高差600メートルを登ったが、私は無理せず途中であきらめ戻った。

二人は夕暮れの中を頂上から滑ったが、ブレーカブルクラストで大変苦労した模様。

5月4日(水)晴
出発7:15~7:40池の平小屋~8:10小黒部谷~11:00大窓~14:00たかのすわり~16:00馬場島

今日も快晴で、周りの山々がとてもきれい。平の池からの八ッ峰、北方稜線は素晴らしい。振り返れば後立山連峰もとてもきれいに見えた。平の池は八ッ峰の展望台のような素晴らしいテントサイトだ。

池の平小屋まで登り(写真9)、小黒部谷を覗き込む。滑り出すと上部は少し急で、途中からブレーカブルクラストになって、中々手強い。傾斜が緩むころからは雪も良くなりすこぶる快適な滑りを楽しめた。思い思いの滑りで標高差500メートルをあっという間に滑って、大窓へ登り返す谷の出合いに到着。

写真9 池の平小屋からの池の平山

小黒部谷の右股を大窓までは650メートルの登り。見上げると雪の谷は忍者返しのように反りあがって、最後は大きな雪庇となっている。シールでジグザグを切って登り上げるが、傾斜は次第に急になってくる。若手二人のペースには全くついていけず、一人しんがりをゆっくり休まずに登っていく。最後の雪庇は左に弱点があり、スキーからアイゼンに履き替えてピッケルを使って乗り越えた。

大窓からは白萩川がずっと下まで見渡せた。上部の中仙人谷は過去の経験と違って、落石が少なく快適に滑っていけそうに見えた。

滑っていくとデブリが出てくる、出てくる。傾斜も結構あって滑るのに苦労した。標高が下がると急に雪が少なくなり、スキーを脱いでクライムダウンを強いられたりして、労力と時間がかかる。

西仙人谷と合流し傾斜が落ちて広くなるとまた快適に飛ばして滑ることができた。

写真10 白萩川からの大窓、この雪渓を滑り下りた

池ノ谷との出合の手前で小休止し、1981年正月に北方稜線に行って赤谷山からの下山中に雪庇を踏み抜き、赤谷尾根から白萩川まで滑落し遭難死したKUACの二人の先輩を忍んで黙とうを捧げた。

写真11 白萩川を滑る

写真12 白萩川下流

池ノ谷の出合から下は白萩川が屈曲してゴルジュになりスキーでは下れない。厳しい渡渉になりそうなので高巻きをすることにした。高巻きルートの「たかのすわり」まで大窓からは1150メートルの標高差を滑ったことになる。

「たかのすわり」は白萩川右岸にあり、取りつきからは雪のない小さなルンゼ状を踏み跡頼りにスキーを担いで登る。結構しっかりしているので迷うことはない。左の方へ上がり、小さな尾根を乗越し、再び白萩川へ下る。テープもあるので安心していたが、雪が出てきてルートがわからなくなり、少し迷った挙句に急斜面をブッシュ頼りに何とか河原まで下りた。

白萩川右岸をすぐ前に見える堰堤まで行けば林道に出て山行終了なのだが、登山道はデブリで閉ざされていて、雪の急斜面となっておりとても歩けない。下はすごい急流のため落ちたら終わりである。

仕方なく、対岸の左岸へ渡渉することにし、渡渉点を探しに少し戻る。いい場所があり靴のまま川に入り腿までの渡渉。渡った後は左岸を堰堤まで行き、難なく堰堤も越えて、橋を使って右岸に渡り林道に出た。

しばらく林道を歩いて馬場島に駐車してあった車まで行き、山行を終えた。車で立山駅まで行って、もう一台の車を回収して帰路についた。

写真13 白萩川下流で行き詰まり右岸をへつる


このルートはAACKで以前に行かれていた剱一周ルートを基に私が考えたルートで、ヨーロッパオートルートにあこがれ、実際に行ってみて触発されてできた山スキーのツアールートです。

久しぶりに行って年を感じましたが、二回り、三回り以上の年齢差がある二人と一緒にテントで移動しながら山スキーができ楽しかったです。

来シーズンはさらに楽しい計画にチャレンジしたいですね!

地図1